メガネをはずした、だけなのに

「どうしたのニコル?」


「だって、ほら!」


 ニコルが指先をクラス分けの張り紙へ向けた。

 よく見ると、一年A組に賢斗くんとニコルの名前がある。

 一年B組に、綿貫弓子と私の名前があった。

 よく見回しても、B組に同じ中学校だった生徒の名前はない。


 つまり……


 高校一年生は、顔見知りのいない一人ぼっちからのスタートだ。


「ええぇ~、うそ……」


 顔から血の気が引いて、メガネのレンズが曇り始めた。

 動揺して息づかいが荒いからかも知れない。

 どうしよう、冷静を装っても心臓のドキドキが止まらないよ。


「じゃあね、弓子ちゃん!」


 ニコルの軽くて元気な言葉に、私は低い声で答える。


「うん、またね……」



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