メガネをはずした、だけなのに
賢斗くんは何も言わず、私に背中を向けて廊下を歩いてく。
きっと、一年A組の教室へ向かってくと思うけど、その後ろをニコルが追いかけていった。
「賢斗クン! これからも仲良くしよう!」
「……やだね」
「どうして? あたしと仲良くしてくれないのさぁ~!」
「じゃあ、カラーコンタクトはずしたら仲良くしてやってもいいぜ」
「むりだよそんなの、賢斗クンのいじわるぅ~!」
「ヤンキーに怒られた……」
「金髪だからってヤンキーはひどすぎるよ~」
中学生の時から変わらない夫婦漫才は楽しいけど、不安になってしまう。
でも、あの二人は恋人同士ではない。
賢斗くんとニコルの後ろ姿を見つめながら、私は一年B組の教室に向かう。
不安な気持ちを胸に、一人で廊下を歩き進んでる。
わかっていたけど、教室の扉を開くと悲しい現実が待っていた……