メガネをはずした、だけなのに
その言葉に、賢斗くんは足を止めた。
「来週のコンクール、予選はどちらがトップになるか勝負よ!さて、最終演奏者はどっちかしら?」
不適な笑みを浮かべて話し続ける橋本さん。
「神童が練習してる革命のエチュードを、本番でぶつけるつもりよ!わたしと神童、どっっちがピアニストとして上か勝負よ!」
賢斗くんは黙って話を聞いてるだけで相手にしてない。
「すでに海外留学を決めてるらしいけど、退学を進められてるみたいね!この学校には残れない運命かしら!神童のクラス担任教師は生徒の頼みやお願いには無関心で有名だから、期待しないほうがいいわよっ!」
えっ、留学ってなに?
「今年のコンクールで一位優勝した人は、主催者から助成金をもらえるのよね!去年の覇者である、橋本詩音さまが阻止してやるわっ!」
初めて聞く事ばかりで、私は驚いてる。
本当に、学校を退学して海外留学しちゃうの?
だから6月の宿泊研修を欠席したのかな?
三年のブランクがあっても、コンクールで一位になる自信はあるの?
「この時期に海外留学なんて変な話しだけど、わたしには関係ないわっ!助成金をもらって楽々海外生活なんてさせない、絶対に阻止してやる!」
言われっぱなしだけど、賢斗くんは無言を貫いて言い返さない。
「じゃあね神童、来週のコンクールで会いましょう!おほほほっ!」
高笑いする橋本詩音さんに向けて、背中を見せたままの賢斗くんが静かに言い放った。
「じゃあな、ピー子」