メガネをはずした、だけなのに

 私は、プリント用紙を持つ手に力を込めて賢斗くんに強く言う。


「私に賢斗くんの心の中は見えないよ!言葉にして伝えてくれないと……」


 高まる感情を押さえきれず、賢斗くんに向かって強く言ってしまう。

 でも、すぐに後悔して話すのを止めてしまった。


 話せない事情でもあったのかな、それとも違う理由で口を閉ざしてる。

 自問自答しながら、お互いに沈黙して次の言葉が出てこない。


「このまま、私の前から消えてしまうの……」


 なんてことを言うの!自分の発言に驚いてしまう。

 一回でも首を縦に振られたら、それで終わりなのに!

 小学生の時に告白して、今まで我慢して待ち続けてきたのよ!


 ネガティブなことばかり、脳裏に浮かんでしまう。

 お豆腐メンタルでゴメンなさい。

 やっぱり、好きな人のそばにいたいよ。



 ――その時、背中を向けていた賢斗くんが振り返った。



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