メガネをはずした、だけなのに

「弓子に話せば、あの時みたいに甘えてしまう」


「えっ……」


「巫女姿の綿貫弓子に、何でも打ち明けてしまうのが怖かったのかもな」


 視線を横に向けて、寂しそうな表情を見せる賢斗くん。

 私に甘えて、何が悪いの?

 外見はクールで冷たい性格を装ってるけど、本当は寂しがりやさんだよね。


 小学生の時は、笑顔で色々と話してくれたじゃない。

 優しくピアノを教えてくれたことも、忘れてないよ。


「そうやって、賢斗くんはいつも一人で抱え込んで苦しい思いをしてるよね」


「……そうかもな」


「だったら……」


 私は思わず、もっと頼ってほしいと言いそうになった。

 でも、視線を横に反らしてる賢斗くんの表情を見てると、何か違うような気がしてくる。


 たぶん、賢斗くんは自分自身の心の中で葛藤してるんだ。

 私だけじゃなく、他人の好意に甘えることが不慣れなんだよ。



 やり場のない気持ちを押さえきれず、神社まで私に会いに来た時の気持ちを思い出してほしいな……



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