メガネをはずした、だけなのに
真剣な眼差しを見て、私の心がぎゅっと締め付けられる。
私みたいに自分を変えたいって、どういうことだろう。
もしかして、中学生だった三年間、一度もコンクールに出場しなかった事を後悔してるのかな。
ピアノ教室が閉鎖されて、お母さんも病床だったから気落ちしちゃう。
でも、頑張ってピアノの練習だけは欠かさずやってたんだね。
そんな気持ちを知らず、中学生の時に告白の返事を迫ったりしてゴメンなさい。
恋愛なんてしてる心境じゃないのに、賢斗くんは何も言わずに答えを待つよう私に話てくれたんだね。
「じゃあ、俺は行くぜ」
「あっ……」
振り返って私に背中を見せると、賢斗くんが静かに口を開く。
「会って話したことはないけど、相葉ってすごい奴だな」
「えっ」
賢斗くんの口から、相葉くんの名前が出てきて驚いた。
教室へ向かって歩き出した賢斗くんを追いかけず、私はその場に立ち尽くしてる。
「いったい、相葉くんが何をしたというの……」