メガネをはずした、だけなのに
2. 綿貫くん、地味だぞ!
教室の扉を開けて、黒板に書かれた座席の配置を見る。
「綿貫と……」
窓際の一番前、外が見えて快適そうだけど教卓が目の前にあった。
先生と向かい合わせなんて嫌だな、と思ったけど授業中は黒板の前にいるのでそうでもなさそう。
「よ~し、みんな自分の席に戻れ!」
クラス担任の男性教師が教室に入ってきた。
まだ歳が若い印象だけど、見た目がちょっと怖い。
一通り自己紹介を済ませ、学級委員を決めることになった。
自主的に委員長などの役員になりたがる生徒はいないようだ。
推薦もないけど、顔を合わせたばかりの新入生だからしかたない。
「誰もやらないのか、決まらないと帰れないぞ」
顔合わせの入学初日から、担任の先生は何だか機嫌が悪い。
誰も発言しないので教室が静まりかえる。
ますます不機嫌になった先生は教壇を降りて、私の目前にある教卓へ移動。
椅子に腰をおろして、B組生徒のプロフィール用紙を見回してる。
そして、低い声で話し始めた。
「綿貫弓子、手を上げろ!」
先生の目の前にいる私が、綿貫弓子なんですけど……