メガネをはずした、だけなのに

 中には、パンフレットと招待状が入ってた。

 私は中身を見て驚いてしまう。


「ピアノコンクールですか……」


「そうだ」


 先生が、あきれた表情で言う。


「まさか、梨木くんの彼女さんが言ってたピアノコンクールって、今日だったの……」


 週末の平日なんて、油断してた。

 というか、コンクールが金曜日だって知らなかった自分がいる。


「行ってこい、これやるからさ」


 そう言って、先生が私にくれたのはタクシーチケット


「先生……」


「教師みたいじゃないよな。でも、職員室で見たお前らが歯がゆくてよ」


「でも、午後からの授業があります」


「うまいこと言っといてやる、保健室に行ったとかな」


 教師が生徒に向かって、授業は休んでいいから好きな人の所に行ってこいだなんて、信じられない。



 この高校に入学した頃は、いい加減で嫌いだった先生が大好きになった!



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