メガネをはずした、だけなのに
周りに、あまり人がいない座席を探す。
前から五列目の中央は、通路もあって移動しやすい。
制服姿の私が歩いて動くと、目立ってしまうのか周囲の人から視線を向けられた。
それでも椅子に腰を下ろし、何とか落ち着いて演奏を聞ける状態に。
先生に感謝しながら「相葉から何も聞いてないのか」という言葉を思い出していた。
「先生は何が言いたいんだろう……」
次の演奏者がステージに姿を見せる。
司会の人の案内だと、この人を含めて、あと二人で終了とのこと。
すでに、賢斗くんの演奏が終わってしまったのかと、肩を落としてピアノ演奏を聞いてた。
「は~あ、がっかりだよ……」
次にステージ上へ姿を見せたのは、なんと、梨木くんの年上彼女さん。
橋本詩音さんが姿を見せたので、驚きながら見入ってしまう。
赤いドレスに綺麗な立ち姿、学校で見る嫌味っぽい悪女の姿はどこにもない。
メイクをした美しい顔立ちは、見る人をウットリさせてしまう……