メガネをはずした、だけなのに

「六月は雨とか大丈夫でしょうか?」


「さあな、先のことはわからん」


「ですよね……」


 気まずい空気が流れたので、先生に礼をして職員室を後にする。

 廊下を歩いてたら、梨木くんの彼女さんと遭遇してしまった!


「ちょっと、ちょっと!待ちなさいよ!」


 顔を背け、知らないふりをしてやり過ごそうとしたのに、見つかって呼び止められてしまう。


「難易度の高い木枯らしのエチュード、神童はノーミスで一位を勝ち取ったわよ」


「そうみたいですね……」


「ステージ上から制服姿のアンタ見えるんだもん、変に目立ってたわよ」


「すいません……」


「神童に伝えといて、今度は負けないって……」


「わかりました」


 そう言うと、梨木くんの彼女さんは私の前から立ち去ろうとする。


「すいません、話があります!」



 私は思わず、彼女さんを呼び止めてしまった……



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