メガネをはずした、だけなのに

「まあね、噂で聞いた話だけど」


「旅立ってから、ニコルや私に事後報告するのかな?」


「たぶん、弓子ちゃんの言うとおりだよ……」


 会話が続かず、お互いに口を閉ざしてしまった。


 ニコルも賢斗くんがいなくなると知って、落ち込んでるのかな。

 気兼ねなく冗談を言い合える男友達は貴重だよね。

 クラスで楽しく過ごせてるかニコルに聞きたかったけど、なかなか言い出せない。


 ――その時。


「ニコち~ん!今日も明日も明後日も来年も可愛いね!」


 爽やかな笑顔で白い歯をキラッと光らせながら、梨木くんが姿を見せた。


「なにさ、ふなっしー……」


 顔の表情を引き吊らせ、ニコルが警戒してる。


「あした、半日でいいから彼女になってよ!」


「なんで、そうなるのよっ!」


 ニコルが走って逃げ出したけど、その後を梨木くんが追いかける。


「ニコち~ん!三十秒だけ愛してる~!」


「ふなっしー気持ち悪い!」



 大声を張り上げながら、ニコルと梨木くんはどこかに行ってしまった……



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