メガネをはずした、だけなのに

「ニコル、俺は伝えたぜ」


 突然、賢斗くんの口からニコルの名前が出てきて驚いた。


「ふぇ……」


 背後から聞き覚えのある声がした。

 私は賢斗くんから体を離し、急いで振り返る。


「えっ!いつからいたの!?」


 職員玄関に立つニコルが、青い瞳で見つめてくる。

 顔の表情が暗くて、何か思い悩んでるように元気がない。


「すまんな弓子、後は任せるぜ」


「あっ、飛行機に乗り遅れちゃうね」


「じゃあ、行ってくる」


 そう言うと、賢斗くんはタクシーに乗り込んだ。

 去り際までクールで素っ気ない。

 目の前の恋人に、最後の一言ぐらいあってもいいよね……


「ゴメンね、弓子ちゃん」



 えっ、どうしたのニコル……



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