メガネをはずした、だけなのに

 握り拳を作るニコルの両手に、力が入って震えてる。


 青い瞳から涙があふれ、頬を伝って流れ落ちた。

 顔を俯かせたニコルが、涙声で口を開く。


「中学生の時も、高校に入ってからだって、好きな気持ちを賢斗クンに伝えてきたんだよ!何度も告白をくり返してきたんだけど……」


「うん……」


「いつも断られてた、弓子ちゃんが好きだからって……」


 下を向くニコルの瞳から、ポトポト落ちる涙の雫が見える。

 こんなにも感情的に涙を流す姿を、初めて目にした。


 ニコルが賢斗くんを好きなのは気づいてた。

 でも、はっきりと自分の思いを伝えて、賢斗くんは断り続けてたんだね。

 何度も告白してたのは初耳だけど、好きな気持ちを押さえることはできないよ。


「弓子ちゃん、片思い卒業おめでとう!」


 潤んだ瞳のまま、顔を上げたニコルが微笑みかけてくる。



 私は思わず、駆け寄って抱きしめてしまう……



< 182 / 184 >

この作品をシェア

pagetop