メガネをはずした、だけなのに

「弓子ちゃん……」


 ニコルも私を力強く抱きしめてきた。


 私たちは、無言で涙を流してる。

 同じ男の子を好きになってしまったのは、しかたないよ。

 だから、あやまらないでね。


 ニコルは何も悪くないよ……


 ゆるがない賢斗くんの思いをニコルは知ってたけど、あきらめる事ができなかった。

 何度も告白をくり返して、心は傷ついてたはず。

 その思いを考えると、私も胸が張り裂けそうだよ。


 なぐさめの言葉をかけるなんて、私にはできない。

 今はこうやって、抱きしめてあげるのが精一杯。


 私はニコルと抱き合ったまま、空を見上げた。


 晴天の青空に、飛行機雲が見える。


 あの飛行機に賢斗くんは乗ってないけど、思わず小声で話しかけてしまった。



「いってらっしゃい、がんばってね……」






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