メガネをはずした、だけなのに

 周りに座ってる子たちが、相葉くんの言葉を聞いてクスクス笑ってる。

 高校生活が始まってすぐ、こんな調子じゃ先行きが不安だよ。


「はあ……」


 大きな溜め息をついて、教室を見回す。

 一年B組に、同じ中学校へ通ってた顔見知りは誰もいない。

 悩みを相談できる優しい友達ができればいいけど……


 (にく)たらしいニコルが、ちょっとだけ(いと)おしく感じる。

 賢斗くんは隣のクラスで、上手にみんなと過ごしてるかな。

 同じ中学校で気心も知れてる相手がいるんだから、だいじょうぶよね。


 でも……


 賢斗くんとニコルが、あまり親密になるのも嫌だな。

 夫婦漫才みたいな掛け合いは見てて楽しいけど、私の心が痛くなる。

 高校生活が始まったばかりなのに、ネガティブ思考だ。


「よし、明日からは……」


 などと意気込んでみたけど、不安は募るばかり……



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