メガネをはずした、だけなのに

「綿貫くん!」


「はい、なんでしょう」


 翌日の昼休み、自分の席に座り一人寂しくお弁当を食べていた私に向かって、相葉くんが話しかけてきた。

 男の子から「綿貫くん」なんて呼ばれたら照れるけど、凄くうれしいよね。

 新鮮な感じで胸がドキドキしても、相手は相葉くんだ。


 相変わらず上から目線で、ちょっと鼻につく。

 左手でサラサラの前髪をかき上げ、右手の人差し指を私に向けながらニヤリと微笑んでる。

 カッコイイ眼鏡男子なのに、色々と残念な人だ。


「相葉くん、なんの用事かな……」


 私の問いかけに、相葉くんは「ふふっ……」と不気味な笑顔を見せる。

 そして、ゆっくりと話し始めた。


「僕と綿貫くんで……」


「えっ、私と相葉くん二人で?」


「食事が終わった後、一緒に……」


「一緒に、どうするの?」


 左手で前髪をかき上げたまま、眼鏡のレンズ越しに私を流し目で見つめてくる。

 思わせぶりな言動に、思わず胸がドキドキしてしまう……



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