メガネをはずした、だけなのに

 相葉くんは自分の席に戻らず、机の横に立って私の食事姿を見守ってる。

 右手の指先で眼鏡のフレームを持ち上げ「なるほど……」と、つぶやき始めた。

 昼ご飯を食べる私に、熱い視線を向けてくる相葉くん。

 クラスメイトの男子に見つめられながら、お弁当を食べるのは恥ずかしいよ。


「綿貫くん」


「はい!」


「キミの(ほほ)に、ご飯つぶが付いてるようだが?」


「えっ……」


 相葉くんは、人差し指と親指で私の頬に付いたご飯(つぶ)(つま)み取り……


 なんと、自分の口に運んで美味しそうにモグモグ食べてしまった!

 予測不能な行動に、周りのクラスメイトも驚きを隠せない。


 相手が賢斗くんだったら、胸がキュンとして頬が赤くなってしまう。

 でも、相手が相葉くんだから血の気が引いて顔が青ざめる。


「塩味のようだ……」


 意味の分からないことを言う相葉くんが、ちょっと怖くなってきた……



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