メガネをはずした、だけなのに

「綿貫くん、(はし)の持ち方が変じゃないか? 誰に教わったんだ?」


「えっと……」


「綿貫くん、厚焼き卵に黒い()げが付いてるようだが?」


「……」


 横に立って相葉くんに実況中継されたら、ご飯が喉を通らないよ。

 お弁当に(ふた)をした私は、静かに立ち上がる。

 ご飯とおかずを残してしまったけど、しかたない。


「じゃあ、相葉くん職員室へ行きましょうか」


「おや、綿貫くん降参かな?」


 私が相葉くんに敗北した覚えはない。

 言い返してもしかたないので、黙って教室を出て行くことにした。


「綿貫くん、まちたまえっ!」


 廊下を早歩きで進み職員室へ向かう私の後を、相葉くんが追いかけてくる。

 歩く速度を合わせると、また何を話し出すかわからない。


 このまま、逃げるように私のペースで歩き進む。


< 23 / 184 >

この作品をシェア

pagetop