メガネをはずした、だけなのに
「綿貫くん、箸の持ち方が変じゃないか? 誰に教わったんだ?」
「えっと……」
「綿貫くん、厚焼き卵に黒い焦げが付いてるようだが?」
「……」
横に立って相葉くんに実況中継されたら、ご飯が喉を通らないよ。
お弁当に蓋をした私は、静かに立ち上がる。
ご飯とおかずを残してしまったけど、しかたない。
「じゃあ、相葉くん職員室へ行きましょうか」
「おや、綿貫くん降参かな?」
私が相葉くんに敗北した覚えはない。
言い返してもしかたないので、黙って教室を出て行くことにした。
「綿貫くん、まちたまえっ!」
廊下を早歩きで進み職員室へ向かう私の後を、相葉くんが追いかけてくる。
歩く速度を合わせると、また何を話し出すかわからない。
このまま、逃げるように私のペースで歩き進む。