メガネをはずした、だけなのに

「失礼します」


 一礼して職員室に入った私は、まっすぐ担任教師の所へ向かう。


「おっ、二人できたのか?」


 先生が首を横に傾げながら不思議顔で言ってくる。


「えっ、委員長と副委員長で職員室へ来るように聞いてたのですけど……」


「プリントの数も少ないから、相葉だけでいいと本人に言ったんだけどな」


 だまされた、本当は副委員長が一人だけで来ればよかったんだ。

 こんな状況でも、相葉くんは冷静さを装って顔色一つ変えずにいる。

 指先で眼鏡のフレームを持ち上げた相葉くんが、耳を疑うようなことを言い始めた。


「だから言ったじゃないか、綿貫くん」


「はあ?」


 相葉くんが私に何を言ったのよ!

 箸の持ちかたが下手だとか、厚焼き卵が焦げてるなど、どうでもいい話ばかりだったじゃない!


 失態の責任を私に押しつけてくるなんて、とんでもない人だ……


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