メガネをはずした、だけなのに

 結局、クラスメイトに配るプリントは私が持たされてる。

 胸に抱きかかえてるけど、さほど重くない。

 分割して二人で持つほどの量でないことは、見た目でも判断できた。


「悪いね綿貫くん、すべてキミに任せてしまって」


 職員室を出てからの相葉くんは、悪びれた様子もなくナルシストみたいに前髪をかき上げてる。

 こんな人が、中学生の時に生徒会副会長だったなんて信じられない。

 選挙で勝ち残り、たくさんの生徒を代表する立場だったはずだけど……


 などと考えてたら、前から二年生の先輩女子二人組が相葉くんの顔を見て近づいてきた。


「ちょっと副会長、この高校に入学したんだ」

「制服が変わって高校生になっても、相変わらずみたいね」


「親愛なる先輩たち! 僕が生徒会に立候補したら、清き一票を相葉亮太にお願いしますよ」


 どうやら、相葉くんが在籍してた中学校の先輩らしい。

 しかも、立ち止まって握手までしてる。

 頼りになる副会長が、この高校に入学してくれて嬉しいと話す声が……

 学年や性別に関係なく人望があるみたいで驚いた。


 いったい、相葉くんは中学校の時にどんな実績を残したんだろう……



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