メガネをはずした、だけなのに

 ちょと興味はあったけど、聞いたら長くなるので今日はやめよう。


 先輩たちは笑顔で手を振りながら立ち去っていく。

 その姿を横目で見ながら、相葉くんは指先で眼鏡のフレームを持ち上げてる。


 深く係わりたくない私は、胸にプリント用紙を抱えたまま廊下を歩いて教室へ向かう。


「まちたまえ綿貫くん!」


「いやです」


「なんだと、地味メガネ!」


「だれが地味メガネよっ!」


 怒った私は、大きな声で叫びながら振り返って後ろを見る。


「えっ……」


 振り返った視線の先に、賢斗くんが立っていた。


 恥ずかしいところを見られた私は、思わず両手で口元を押さえてしまう。

 私の胸元から落ちたプリント用紙が、廊下の床に散乱した。

 相葉くんは、ほどけた靴紐を結ぶのに片膝を折ってしゃがみ込んでる。


 私が向けた視線の先に、大好きな片思いの彼がいた。


「賢斗くん……」


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