メガネをはずした、だけなのに

 賢斗くんが無言で、廊下の床に散らばったプリント用紙を拾い始めた。

 その様子を見て、私も我に返り慌てて手伝う。


 賢斗くんが私に、拾い集めたプリント用紙を手渡してくる。

 そして、静かに話かけてきた。


「地味メガネって、クラスの連中に言われてるのか?」


「そっ、そんなことないよ……」


 恥ずかしさで視線を横に反らし、顔を俯かせてしまう。

 膝を内股にしながらモジモジする私に向かって、賢斗くんが言ってきた。


「弓子」


「はい……」


「可愛い見た目もいいけど、ハートがピュアって大事だぜ」


 賢斗くんが私の頭に、右手をポンポンとのせながら言ってくる。

 私は瞳を潤ませ、無言で何度も頷いた。


 胸に抱えたプリント用紙を、落とさないように気をつけながら……


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