メガネをはずした、だけなのに
「じゃあ、俺は教室に戻るから」
「うん、ありがとう」
賢斗くんに向かってお礼は言えても、どうしてこの場にいたのかは聞けなかった。
私が職員室に入った時、一年A組の担任教師と何か大事な話をしてたようだけど……
職員室を私より少し後に出てきた賢斗くん。
担任の先生と、どんな会話をしてたのか興味はある。
すごく真剣な眼差しで先生と向かい合ってたけど、今は何も聞かずにそっとしておこう。
「ちょっと、綿貫くん!」
「あっ、えっと、何でしょう」
相葉くんの声で、私は我に返る。
彼は綿貫くんの友人なのかと聞かれたので、そうだよ、と短く答えた。
「さっきはすまない、地味メガネなどと口走ってしまった。無念……」
「気にしなくていいわよ」
相葉くん、アナタはナルシスト眼鏡じゃないのよ!
そう心の中で思ったけど、口に出すのはやめておく。
そんなことより、心に引っかかってることがある。
相葉くんと一緒に廊下を歩いてる姿、賢斗くんには見られたくなかったよ……