メガネをはずした、だけなのに
扉の前で立ち止まり、廊下で私は大きく深呼吸。
クラスメイトが後からやってきて、次々に教室へ入ってく。
すぐ横を通り過ぎても、地味子の綿貫弓子だって気づいてない。
ちがう教室の女子生徒がB組に何の用事かな? ぐらいに思ってるのだろう。
不安で胸が、ぎゅっと締め付けられる。
とうとうチャイムが鳴ってしまった。
このままだと先生が来てしまう。
教室の中は、登校してきたクラスメイトが着席して雑談をしてる。
さっさと中へ入ってしまえば良かったのに、これじゃあ逆に注目を浴びてしまう。
私が足を内股にしてモジモジさせてると、背後から聞き慣れた声がした。
「どうした弓子、イメチェンか? すごく可愛くて似合ってるぜ」
スカートの裾を翻しながら振り返って後ろを見る。
すると、遅刻ギリギリに登校してきた賢斗くんが立っていた。
ザワザワと喧騒する教室内に比べて、廊下は生徒の姿がなく静まりかえってる。
私と賢斗くんは視線を合わせたまま、その場に立ち尽くしていた……