メガネをはずした、だけなのに

 先生が教室に入ってきたので、クラスメイトたちが自分の席に戻っていく。

 ザワザワと落ち着かない生徒を見て、先生が首を傾げていた。


 イメージチェンジが成功したのは良かったけど、予想以上の反響に驚いてる。

 などと考えていた時、先生と視線が合ってしまった。


 学校で怒られたり注意されないナチュラルメイク術、という特集が登載されてたファッション雑誌。

 参考にして頑張ってみたけど、注意されるかな……


「綿貫!」


「はっ、はいいっ!?」


 先生が大きな声で私の名前を呼ぶ。

 返事をしたのはいいけど、動揺して声が裏返ってしまった。


「メガネをはずしたら、明るい性格に見えるな」


「はい……」


「よし、じゃあホームルームを始めるぞ!起立!」


 私は立ち上がって先生に礼をして、椅子に座るといつもの光景が戻ってきた。

 注意されるどころか、何も言ってこない。


 そうだ、この先生は副会長と副委員長を見まちがえるほどアバウトで、いい加減な教師だった。


 歳は知らないけど、見た目も若い先生なので理解はありそう……



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