メガネをはずした、だけなのに
「おはよう綿貫さん!」
「はいっ、おはようございます梨木くん」
朝の登校時間帯に、生徒玄関の前で梨木くんが声をかけてきた。
私は立ち止まって頭を下げ、敬語で挨拶するのが習慣になってる。
賢斗くんやニコルなど付き合いが長い同級生は別として、無意識に丁寧な言葉が出てしまう。
「同じ歳なんだから、もっと肩の力を抜いていこうよ綿貫さん!」
「そうですね、ありがとう梨木くん」
彼を見ると、サッカーのユニホーム姿なので朝練をしていたようだ。
額の汗をユニホームの袖で拭き取り、白い歯をキラッと光らせ満面の笑顔を見せている。
清々しいスポーツ男子からの気さくな挨拶は、朝から元気をもらえて嬉しい。
「じゃあ、また教室で!」
素早く右手を上げて敬礼、梨木くんが笑顔で立ち去っていく。
これから部室に戻って制服に着替えるんだね。
「みんな、おはよう!」
朝のホームルームが始まる前に教室へ姿を見せる梨木くん、みんなに満面の笑みで挨拶していた。
女子が梨木くんを好きになってしまうのは、仕方ないような気がする。
清々しくて爽やかな体育会系の男子には憧れてしまうよね。
でも、梨木くんに纏わる噂を耳にして、私は驚愕した……