メガネをはずした、だけなのに
「綿貫くん!」
「はっ、はい!」
突然、声をかけられ驚いてしまった。
振り向いて見なくても、誰かすぐに分かってしまう。
特徴のある話し方と、威嚇するように私の名前を呼ぶ独特の口調。
「まだいたの、相葉くん……」
「まだいたの、とは失礼な!」
「どうしているの、相葉くん……」
「どうしているの、とは無礼だぞ!」
「いいかげんにしてよ相葉くん……」
「いいかげんにしてよとは失敬ではないか!綿貫くん!」
何を言っても突っかかってくる相葉くんが教室に姿を見せた。
右手で前髪をかき上げるナルシスト姿、流し目で勝ち誇った表情を浮かべながら私を見つめてくる。
「はい、わかりました降参です」
「なんだね、その態度は!」
「だって相葉くん、うるさいから……」
「うるさいとはなんだっ! ひどいぞ綿貫くん!」