メガネをはずした、だけなのに

「賢斗くん、いきなり何を言うのよ!」


「べつに……」


 私から視線を反らして、賢斗くんは歩き進んでいく。


 その場に棒立ちの私は、彼の背中を見つめながら心の中で思った。

 たしかに、黒縁メガネで髪は長いストレートのままだから、暗い印象を与えてしまうかも。

 真新しい高校の制服だって、着慣れてないので違和感はあるよね。

 スカートの丈も長くて、地味に見えてしまう。


 でも、しかたないよ……


 入学初日、今日が初めての登校日なんだから。

 あまり派手だと、先生に目をつけられてしまうから心配になってしまうよね。




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