メガネをはずした、だけなのに
「マイハニー、僕はキミを愛してるのさ!」
生徒玄関で上履きの靴を手に持つ私に向け、相葉くんが歌うように言ってきた。
周りに同級生やクラスメイトがたくさんいても、胸を張って堂々としてる。
彼に恥ずかしいという思いは無く、涼しい顔をていた。
周りの生徒から注目されるのに、私に向け余裕の表情で大きな声で言ってくる。
「どうだ、僕の揺るぎない愛を思い知ったか!」
なぜ、この場でそんな事をミユージカル口調で言ってくるのか理解できない。
穴があったら入り込んで、逃げ出したいよ。
――その時、救世主が姿を見せた。
「ほぇ? 弓子ちゃんどうしたの?」
聞き覚えのある可愛らしい声の女の子を、私は見つめる。
ご飯と納豆と演歌を愛する、青い瞳の大和撫子が立っていた。
長い金髪に手串を入れながら、相葉くんに視線を向けると毒舌で言い放つ。
「きのうのクソ眼鏡じゃないのさ!」