メガネをはずした、だけなのに

「マイハニー、僕はキミを愛してるのさ!」


 生徒玄関で上履きの靴を手に持つ私に向け、相葉くんが歌うように言ってきた。

 周りに同級生やクラスメイトがたくさんいても、胸を張って堂々としてる。


 彼に恥ずかしいという思いは無く、涼しい顔をていた。

 周りの生徒から注目されるのに、私に向け余裕の表情で大きな声で言ってくる。


「どうだ、僕の揺るぎない愛を思い知ったか!」


 なぜ、この場でそんな事をミユージカル口調で言ってくるのか理解できない。

 穴があったら入り込んで、逃げ出したいよ。


 ――その時、救世主が姿を見せた。


「ほぇ? 弓子ちゃんどうしたの?」


 聞き覚えのある可愛らしい声の女の子を、私は見つめる。

 ご飯と納豆と演歌を愛する、青い瞳の大和撫子が立っていた。

 長い金髪に手串を入れながら、相葉くんに視線を向けると毒舌で言い放つ。



「きのうのクソ眼鏡じゃないのさ!」



< 60 / 184 >

この作品をシェア

pagetop