メガネをはずした、だけなのに
苦々しい表情の相葉くんに向けて、ニコルは話し続ける。
「なにさクソ眼鏡、ミュージカルの練習でもしてるの?」
「むむ……」
「お一人様ミュージカル、いつ開演するのさ?」
「ぐぬぬ……」
身振り手振りでオーバーリアクションの相葉くんが、愛や恋を歌うように語る姿を見たニコル。
なぜかミュージカルに見えてしまったらしい。
対照的に、口を閉じたまま顔が青ざめる相葉くん。
どうやら、ニコルのことが凄く苦手みたい。
意を決した相葉くんが、いきなり大きな声で言い放ってきた。
「おぼえとけよ、金髪チビ!」
「誰が金髪チビよ!クソ眼鏡!」
相葉くんがニコルに捨てゼリフを言うと、足早に生徒玄関を立ち去っていく。
周りにいた生徒も、ニコルと相葉くんのやり取りを見て、何かの余興練習ぐらいに思ったようだ。
私も胸をなで下ろし、心を落ち着かせてから話し始める。
「ありがとう、ニコル……」