メガネをはずした、だけなのに
「綿貫さん……」
「……」
梨木くんの顔が近くて、話かけられても言葉が出てこない。
私は視線と顔を横に背けて、抵抗するのが精一杯。
緊張で固まった体は、思い通りに動かないよ。
少女マンガで見たことはあるけど、自分がリアルで壁ドンされると思わなかった。
足は内股になってクネクネしちゃうし、両手は真っ直ぐ床に向かってダラリと伸びたまま。
受け身の状態で、何も抵抗できない私がいる。
梨木くんの息づかいが耳元で感じられる。
顔と体が恥ずかしさで熱くなってきた。
「落ちついて聞いてよ、綿貫さん……」
ジャージ姿のサッカー男子に壁ドンされてる状態で、落ちついて話を聞けるわけがない。
なんなの梨木くん、いったい何がしたいのよ!
動揺する私に構わず、耳元で囁くように梨木くんが話かけてくる。
「キミのことが好きだ……」