メガネをはずした、だけなのに

「そんなこと言われても……」


「綿貫さんが付き合ってくれたら、ちゃんと話して別れるからさっ!」


 今の言葉を聞いて血の気が引いた。

 新しい恋人ができたら、今の彼女と別れるって考えなんだね。

 クラスメイトの女の子たちが聞いたら軽蔑するよ。


 梨木くんはスポーツが得意な爽やか好青年に見られてるはず。

 今の年上彼女さんを、もっと大切にしてほしいな……


「梨木くん、ごめ……」


「いいじゃないか、たのむよ綿貫さん!」


 私の話を断ち切るように、声を被せてきた。

 まったく聞く耳を持ってくれない梨木くんが、グイグイ押してくる。


「ちゃんと話を聞い……」


「こんなに好きなんだよ、どうして!」


 梨木くんに壁ドンされたまま、私は積極的に攻められてる。


「ほぇ!? なにしてるのさ弓子ちゃん……」


 廊下から聞き覚えのある声がした。



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