メガネをはずした、だけなのに

 話が変な方向に反れてきた……


 こうなったら、誰もニコルを止められない。

 教室の壁に背中を付けたままの私は、胸のドキドキを沈めながら成り行きを見守ってる。


「よく聞きなさい、ふなっしー!神性な巫女として生まれてきたから、名前が弓子(ゆみこ)なの!」


「はあ?」


「You 巫女なんだからね!」


「なんだそれ……」


 いやいや、ニコルぜんぜんちがうよ!

 名前の由来は、破魔弓という神事用の弓からきてるんです!


 今のニコルに何を言っても無駄みたい、鼻息荒く胸を張って得意げに力説してる。


「わかったら教室から出て行きなさいよ、ふなっしー!」


「くそっ……」


 梨木くんはニコルを睨みながら舌打ちして、教室を出ていった。

 私は安堵して膝から床に崩れ落ち、冷たい床にお尻を付けて座り込む。

 そして、思いっきり脱力しながら溜息まじりで口を開く。


「助かった……」



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