メガネをはずした、だけなのに

「ありがとうニコル……」


「クソ眼鏡と、ふなっしー、タイプのちがうイケメンに言い寄られて、弓子ちゃんも忙しいね」


「そんなことないよ……」


 あれ? どうしてニコルが梨木くんの名前を知ってるの?

 不思議に思って聞いてみた。


「しばらく廊下で隠れながら立ち聞きしてたからだよ」


 長くて真っ直ぐな金髪に手串を入れながら、ニコルは悪びれた様子もなく言ってくる。

 だったら、もう少し早く助けてほしかったな。

 毒舌ニコルのことだから、私が困ってる姿を楽しんで見てたのだろう。


 でも、状況が変わって心配になり声を掛けてくれたんだね。

 いつも絶妙なタイミングで助け船を出してくれて感謝してるよ。

 そういえば、生徒が下校した放課後の時間帯に、どうしてニコルが一人で廊下を歩いてたんだろう。


 まさか……


「保健室のベッドで寝てたんだけど、起きたら放課後で誰もいなかった」


 だと思った。


「A組の教室に鞄を取りに行って、廊下を歩いてたらハアハアしてる弓子ちゃんを見かけたんだよ」


 なにがハアハアよ、失礼しちゃうわね!

 と言いたいけど、実際はどうだったか怖くて知りたくもない。


「さあ、立ち上がって!帰ろうよ弓子ちゃん」


 ニコルが私の手を引いてくれた。

 でも、顔を見るとニヤニヤして嫌な感じ。


「ありがとうニコル、じゃあ帰ろうか」



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