メガネをはずした、だけなのに

「なにやってるの、祐介……」


 梨木くんの背後に立っていた女子生徒が、名前を呼び捨てにした。

 振り返った梨木祐介くんは、酷く驚いた表情をしてる。

 でも、すぐにいつもの清々しくて爽やかな笑顔を相手に向けた。


 名前を呼び捨てにした女子生徒を見ると、制服の胸のスカーフが黄色なので上級生みたい。

 すごく美人さんだけど、目元が鋭くて気難しい性格に見える。


 実際に私の事を鋭い眼光で睨んでた。

 上から目線で私を見つめる上級生の女子生徒が、声のトーンを低くしながら言ってくる。


「アンタの顔、おぼえたわよ……」


 背筋が凍るような恐怖で、ちょっと足が震えた。

 私は何も悪くないのに、先輩から目を付けられてしまったらしい。


 こんな事態を招いた張本人の梨木くんは……


「もうちょっと押したら、落とせたのに……」


 などと悪びれもなく小声で言ってる。


「祐介は部室に行って制服に着替えなさいっ!」


 上級生の女子生徒が、梨木くんを指示するように言い放った。



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