メガネをはずした、だけなのに
力ない小声をグラウンドに向けた。
待ち受け画面の私は、何も力を貸してない。
梨木くんには恋愛よりも、部活動を頑張ってほしいな。
チャラい男子よりも、スポーツマンのほうが似合ってるよ。
「待たせたな、綿貫くん!」
突然の大声で静寂が破られた。
相葉くんの「なははははっ!」という意味不明の笑い声が教室の中に響き渡る。
「ぜんぜん、まってないよ……」
無感情の冷たい言い方で私は答える。
6月の上旬に開催される宿泊研修のグループ分けを、どう決めたら良いか学級会の前に話し合って作戦を練る予定だった。
生徒会室へ顔を出してから、放課後の教室に姿を見せると相葉くんが言ってたので待ってただけ。
二年生の先輩に生徒会へ在籍してる知り合いの先輩女子がいるらしく、少し話し込んでいたようだ。
相葉くんは一年生だけど、後期の生徒会役員にでも立候補するのかな。
そのための根回しかなって、考えたりもする。
――突然、なんの前触れもなく相葉くんのお一人様ミュージカルが幕を開いた。
「聞いてくれたまえ、綿貫くん!」