メガネをはずした、だけなのに

「このままでは、何も決まらない!」


 ザワザワとした騒ぎ声を打ち消すように、威風堂々と発言する相葉くん。

 口を閉じたクラスメイトが、教壇に視線を向ける。


「先生と役員が話し合うので、次の学級会でグループ分けの決め方を提示したいと思います。異論のある生徒は挙手してください!」


 大きな声で発言する相葉くんに向け、意見を言う生徒はいなかった。

 静寂する教室に、ピリピリとした空気が流れる。


「このまま意見がなければ、決定事項とします。みなさん、よろしいですね!」


 張りつめた空気の中で、自分勝手な主張をする人はいなかった。

 先生を話し合いに巻き込んだ事で、文句を言いづらい状況にした相葉くんの手腕は、さすがとしか言いようがない。

 全校生徒を目の前に、ステージ上で意見を述べる生徒会のほうがハードルは高いよね。


 百戦錬磨の手腕を目にした私は、成り行きを見守ることしかできなかった……



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