メガネをはずした、だけなのに

 思わず大きな声を出してしまった。

 周りにいた登校中の生徒も、振り向いて私たちを見つめてる。


 学校の敷地内、グラウンドのすぐ横にある通学路で立ち尽くすニコルが口を開く。


「弓子ちゃんは何も知らないの?」


「ごめんなさい、賢斗くんは私に何も話してくれないから……」


「そうなんだ」


 お互いに向かい合って、大きな溜息をついた。


 すぐ目の前に生徒玄関と校舎あがるけど、足が進まない。

 グラウンドで朝練をしてる運動部の掛け声を耳にしながら、二人で口を閉じたまま脱力してる。


 その時、目の前にサッカーボールが転がってきた。


「おはよう綿貫さん!それと、隣にいる……ニコちん、おはよう!」


 姿を見せたのは、ユニホーム姿の梨木くん。

 まぶしい笑顔で白い歯をキラッと光らせ、さわやかな挨拶をしてきた。


「ニコちん、ですって……」



 眉根を吊り上げたニコルの額で、ブチッと何かがキレた……



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