毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
へらっと笑いながらも内心、よくもまぁつらつらと淀みなく嘘八百を並べられるなと自分でも思う。
彼女からすれば腸が煮えくり返るくらい、心の中は荒ぶっていることだろう。
案の定、彼女は目を吊り上げてどうしようもない、決定打を口にした。
「どんなに演技をしても……しらばっくれても無駄よ!アンタのことを知ってる子が私と同じ学校に何人かいるんだから、ここに連れてきて証言させればすぐにわかるわ!だいたい、アンタみたいな見た目の女を誰かと間違えるだなんてするはずないでしょ!!」
「…………」
……そう言われてしまえば、私が出来ることは口を閉じることだけ。
今ここで何を言い返そうと、見た目の事を言われてしまえば反論の余地もない。
四人の誰も言葉を発しないこの場で、数分にも感じられる静寂が訪れた。
完全に詰んでいる。
笑顔を消すことは無いけれど、私が何も言い返さなくなったのを見て気分が良くなったのか、攻撃的な口ぶりに加えてさらに棘を突き刺す。
「アンタは黙って笑ってれば可愛いんだから、昔からそうしてれば良かったのよ」
くすくすと手元に口を当てて笑う姿は有名なおとぎ話に出てくる意地悪な姉のようで、自分がシンデレラのような気分になる。
シンデレラのような悲壮感は私の中にはまるで無いけども。
「そうやってお人形さんになっていれば、お母さんは"あんなこと"にならずに済んだのにね?」