毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「どう、答えて欲しい?」
私は私が思っている以上に弱かったらしい。
予想外に声が震えて、自分がなにかに脅えていることに気づいた。
そして、いつの間にか私の腕を解いて二人分くらいの距離を取った慎くんが、物理的にも心理的にも遠くにいってしまったことに気づく。
実に呆気ない。
人間関係というのは、恋人という関係であったとしてもこんなに脆く、一瞬で崩れ落ちてしまうものなのか。
いろいろな事を理解した私は、自分が何に脅えているのか、そこでわかった。
また失うことがないように。
もう自分の好き勝手な行いで誰も傷つかないように。
そう思って積み重ねたものが崩れるのが。
自分の努力をなかったことにされるのが。
……とても嫌で、苦しくて、怖いんだ。
「私は……」
それでも、昔の自分は愛想が悪くて、人間関係において努力しなかったこと。
それは認めなきゃいけない。
「本当の私は……」
彼女に声を掛けられた時から認めるべきだったんだ。
私の生き方で一人の人生を終わらせるところだった。そんな身勝手な奴だって。
「……お人形さんなんかじゃない」
でも、口に出せたのはそれだけで。
私の全てを暴露だなんて、そんなの出来るわけがなかった。
結局私は我が身がいちばん可愛くて、守りたい。
昔から根っこの部分は何も変わっていない、自己中心的な人。
曖昧にぼかして、でも、今の表の自分を否定する。
それで精一杯だった。