毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
小学生になってからも毎日母が選ぶ、着たくもないふりふりの可愛い服を着て学校生活を送り、中学生になってようやくそれから解放されたある日、私は母の思考のズレに絶望する。
『お母さん、テストの結果が返ってきたよ。学年一位なんだって』
そう言って、高得点ばかりが羅列された成績表を広げて見せたときのこと。
授業中に寝ることなくノートをとって、計画的にテスト勉強を頑張った。それ相応の結果が出せて嬉しくなった。
相変わらずそれが顔に出ることはなかったけど、母も喜んでくれると思ったのだ。
それが、
『かれんは可愛いのが魅力なんだからそんなことはしなくていいのよ。……まさか、夜遅くまで勉強してたんじゃないでしょうね。隈ができたらどうするの?!』
こんな風に怒ってきたのだからさすがの私も思わず馬鹿みたいにぽかんと口を開けてしまった。
そして、そこでやっと気づいた。
母の中での私は可愛い娘なんかじゃない。
昔も今も"可愛いお人形"でしかなく、それはこれから先も変わることがないということに。