毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


『───ねぇ、アンタほんと目障りなんだけど、消えてくんない?』


突然。

本当に突然。女子四人に体育倉庫へ連れてこられたかと思うと、ぐっと胸ぐらを掴まれた。さらには心無い言葉を威圧感と共に浴びせられて、怯んで体が動かなくなる。


消えろとまで言われるほどに恨まれていることはわかるが彼女とは同じクラスですらないから関わりもなくて、かろうじて動く口で何を言えばいいのかわからない。


結局、私は黙って相手の鋭い目を見つめ返したけれど、それも相手の神経を逆撫でしてしまったらしい。


バシッと重みのある清々しい音が倉庫に鳴り響いた。


『何睨んでんだよ!その顔、まじでムカつく!!』


その顔、というのは相手の言い方からすると睨んでいる顔ではなく整った顔のことだろう。生まれつきのものにキレられてもどうすることも出来ないのに……理不尽だ。


『ほんと、顔は可愛いのに性格は可愛くない。ビンタされても平然としてさぁ。可愛く泣けば同情くらいしてあげたのに』


ふっと嘲笑して可哀想な子を見つめる目でこちらを見下ろす彼女。その目を向けている時点で多少は同情してくれているのでは?と思ったが、口には出さない。


自分の感情を把握出来ていない人に何かを言うのは、火に油を注ぐようなものだ。


……というか、わざわざ舞が委員会の集まりに行っている時間に四人で私を囲んで無理やり人気のない体育倉庫に連れてきて、こんなことをしている方が可愛くない性格をしていると思うのだけれど。


私の考えが間違っているのだろうか。


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