毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
おかしな王子様
「───こうして私達家族は仲良く暮らしたのでした。めでたしめでたし」
長い昔話をしている間、水上くんは静かに……ただ、ときどき何かを考えるように俯いていた。
話に一区切りついた今も、何も言葉を発さない。
……あとは廊下での出来事を話せばいいんだっけ。
過去の話を長々としてしまったせいでもう随分と時間が経ってしまった。ここは簡潔に話さなければ。
「昔の私をバラされて咄嗟にとぼけてみたんだけど、その子が私を他の人と間違えるはずがないって言い切ったら坂本くんはその子を信じた。そこへ水上くんがやって来た。それだけ」
そんな単純な話で、こうなったのも当たり前のこと。
あのときは私の触れられたくないところを土足で踏みつけられたから、動揺して悲劇のヒロインぶってみたけれど。
冷静に考えれば客観的に見た私は最低なやつで、彼女は彼女の中の真実を話していてそれを信じる慎くんは悪くないし、私が勝手に傷ついただけなのだ。
こういうときは大体聞き手は話し手を慰めるんだろうけど、私にはそんなことしてもらう権利なんてなくて。
私にかける言葉を選んでくれているであろう水上くんへそれを制しようと口を開いたとき。
「坂本くんは馬鹿だよね」
私への慰めではなく、慎くんへのストレートな悪口が聞こえた。
今のは……幻聴?
あの爽やかな王子様が吐いた言葉とはとても思えないのだけど。
って、あれ。こんなこと前もあったような気がする。