毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
「中学の人達も、君の親友以外は全員馬鹿だと思うんだ。全員っていうのは生徒だけじゃなくて教師や親も含めてね」
記憶を掘り起こそうとしていると、またもや同じ言葉が発せられて、私の体の機能は正常だということがわかる。
私の耳が正常みたいで良かった……じゃなくて。
この人が毒舌キャラだなんて、聞いてない。
なっちゃんの話によると、常に微笑みを浮かべていて温厚な性格。
口数は少ないものの周りへかける言葉はどれも優しく思いやりのあるもので、暴言とは縁遠い人。
だからこそ、女子の人気が高いとはいえ男子からも嫌われることなく過ごしていると聞いていたが、この様子から察するに……
「……あの、ちょっと待って。一つ確認したいのだけど、水上くんってもしかして私と同類?」
「そうだね。二つの顔がある、という点では同じかもしれない」
……清々しいほどにあっさりと認めた。
私は裏の顔を知られないようにと必死だったのに、彼はなんでもないことのように仮面の下を晒す。
その心の余裕が私とは雲泥の差で、同類なんて言葉を使ったけどもそんなの勘違いだった。かなり恥ずかしい。
「まぁ、今は僕の話は置いといて坂本くんの話だよ。いくら元同級生が信憑性のあることを言っていたからって、結城さんから離れるなんて馬鹿としか思えない」
言葉から滲み出る嫌悪感は私へ向けられたものでは無いとわかっているのに、あまりにも酷く冷たいものだから心臓がドキリとする。
それが水上くんに伝わったらしく、宥めるように頭を撫でるから余計に心臓が音を立てた。