毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
本当の私は周りを不幸にする存在だと。
そのことをわかっているはずで、そんな私のことを好きになるわけがない。
だから、知ってもなお私を選ぶだなんて、全く意味がわからない。理解できない。
それに、私は彼の言葉を易々と信じるほど馬鹿じゃないのだ。
「急に、なに。どうしたの。落ち着いて」
「あぁ本当だ。表情はあんまり変わらないね。片言になってるから狼狽えてるのがわかるし可愛いらしさは変わらないけど」
「馬鹿にしてる?」
「僕より頭がいい結城さんを馬鹿にするなんて恐れ多いよ」
「馬鹿にしてるよね」
「否定しないってことはやっぱり結城さんが学年一位だったんだね。テストの結果がずっと二位だったから誰が上にいるのか気になってたんだ」
……一体なんなんだ。
油断するとすぐにその隙を突かれてしまう。
過去の話をしたとはいえ、こうしてボロが出てそれをこの人に晒すのはなんだか癪に障る。
あの場から連れ出されてここまで、手のひらの上で転がされているようだ。
とはいえ、キスを迫られる中で自然に話をすり替えることが出来た私の方が一枚上手だったと言えよう。
これは私の勝ち───
……ちゅっ。
「な、なにして……!」
「そういえば君はまだ他の人のものだってことを思い出したんだ。さすがにそれでキスをしたら君も悪者になってしまうからね。それは嫌でしょ?」
「そうじゃない」
「手の甲ならセーフだよね」
「話をきけ」
「好きだから」
この男は、本当に……おかしい。