毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「君の過去を聞いたとき。周囲の言葉に反抗して懸命に生きようとするその様が、お人形なんて言われてる子とは思えない、人間らしくて健気で……そして君の行動力と精神の強さが、美しくも危ういと思った」


その言葉は私を美化しすぎだと思ったが、決して悪い気はしない。

とても大切に思われているような気になってきて、それは慣れていないことで……心を激しく掻き乱される。


……もう本当に。この人には勝てる気がしない。


「強く生きる君はかっこよくて、正しい。そして、たまに無意識に零す笑みは独り占めしたくなるほどに可愛い」

「……私、水上くんの前で笑った記憶はない」

「バスケのときに笑ってるの、しっかり見てたよ。っていうか、見てたのが僕だったからいいものの、他の人だったら光の速さで噂になってたからね?隠すなら隠すでもっと徹底的にしなよ。結城さんは意外とボロを出しすぎだよね」

「ごめんなさい」


あれ、なんで私怒られて謝ってるんだ。
それに、水上くんは彼氏でもなんでもないのに独占欲を出しているのが不思議でたまらない。

それとも、彼氏ではないけど私を好きだから……ってことなんだろうか。
そう思うとなんだか胸の辺りがむず痒い。


「はぁ……」

「なんで、ため息……?」

「やっと伝わったかなと思ってね。道のりが長かったなぁ」


この人は人の心を読むような、魔法の力でも持っているのかと本気で疑ってしまう。

私は動揺してるのはわかりやすいらしいけどそれ以外は顔に出にくいから、余計に不思議だ。


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