毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


夏の暑さが残る中、彼女が全力で男たちから逃げているのが見えたから。


無礼な奴らへの怒りを必死に抑えながら、逃げ切った彼女を楽にするための物をかき集め、無事に救ってみせた。


僕が近づく度に仮面を貼り付けその下では警戒し、でも僕が与えるものに喜び、簡単に隙を見せる。


そしてそれに気づいてまた警戒を強める。


そんなことをただ繰り返していただけ。


……なんて彼女は思っているんだろうけど、気づけば彼氏くんよりも近くにいるし、自覚していないだけで心を許してしまっている。


他人に興味を持たない彼女が他のクラスである僕をわざわざ視界に入れるようになったのがその証拠。


そのことに早く気づいてくれたらいいのに、自分の心に鈍感な彼女はなかなかガードを緩めてくれない。


さて、これからどうしようか。
この行事でなにかを仕掛けてみようか……と考えていたところ。


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