毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす



抵抗する気力もなくなるほど精神的にダメージを受けていたのか、大人しく連れ去られてくれた彼女は時間をかけて全てを曝け出した。


多少強引に迫った自覚はあるし、弱いところにつけ込んだ感は否めないけど……これくらいしないと頑固な彼女はいつまで経っても心を閉ざしたままで。


今日が二度とない絶好の機会だったんだ。


僕の想いを聞いて疑い、怯え、瞳を揺らし。

最後には僕を信じてくれて、その瞳に隠しきれない喜びを浮かべた。


でも、僕たちへの後ろめたさから目を逸らした彼女は、きっとどちらも選ばない。


自分のことを強いと勘違いしている彼女は一人で反省会をして、一人で抱え込んで、勝手に間違った答えを出して、一人ぼっちになる。


一度は素を見せた僕にさえ、また仮面をかぶって距離をとるんだろうな。


もう昔のような悪者になりたくない。

綺麗な心を持ち続けていたい。

自分の幸せを優先して、誰かを不幸にすることなんてできない。


そんな思いから誰も幸せにならない道を選ぶ。


< 139 / 207 >

この作品をシェア

pagetop