毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
中腰の姿勢からしゃがみこみ、男の子より目線を低くする。
そのまま目を見つめながら笑顔を崩さず、言葉を返した。
『そうなんだね。サッカーが大好きだから、ボールを追いかけちゃうのはわかるけど、ここは危ないからね。今度からは右見て左見てもう一度右を見て、周りを確認してから渡ろうね。出来る?』
普段、あの天使くらいしか子供の面倒を見ることがないため、子供の扱いがよくわからない。
子供相手にお説教くさくなってしまった。……が、しかし。
このくらいの教育はしておかないとダメだと思うし、見て見ぬふりは出来ない。
他人の子供だが、これくらいのことは許されるだろう。
と、自分を正当化するがお説教じみたことをしてしまい、男の子が泣き出さないかと内心ハラハラしながら男の子と見つめ合う。
『うん!できる!今度からは右見て左見てもういちど右を見て、わたる!』
『いい子だね。約束だよ?』
『やくそく!』
泣くどころか小学生らしい無邪気な笑顔で元気よく約束してくれた男の子にほっとして立ち上がり、バイバイと手を振って別れた。
理解のある子供で良かったと安心しつつ、なぜわざわざお説教なんかしたんだ何様だ自分!と反省の入り交じった気持ちでごちゃ混ぜの気持ちのまま踵を返すと、そこへ──
『たった今好きになりました!俺と付き合ってください!』
頬を赤らめ、サッカー大好き!と言った男の子にも負けて劣らない、キラキラした目で告白してきたのが慎くんだったのだ。