毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす
……だけど残念だね。
生憎僕は、そんな綺麗な心を持ち合わせていないんだ。
確かにみんなが幸せになれるならその道を選べばいいけど、そんな理想どおりにいく未来なんて存在するわけがない。
特に恋愛なんて思いどおりになる方が奇跡で、だから人々はそれを運命だって言うんでしょ?
三人のうち二人が幸せになれる未来を潰して三人とも不幸になりましょうってそれ、とんでもなく馬鹿だよ。馬鹿。
頭いいくせに肝心なところでズレてるんだから。
そんなところも可愛くて好きなんだけどね。
って、それは今は置いといて。
君がやっとこっちを向いてくれたのに諦めるなんて、もったいないことするわけがないから。
───覚悟しててよね、僕の可愛い女神様。
白と淡い黄色の衣装に包まれ、目を閉じてパチパチと燃える火の前で祈りを続けている彼女に目を向けると。
神聖なオーラを感じさせていた彼女は突然パチリと目を開き、微笑む僕に威嚇のような視線を向けたのだった。